乾貴士がエイバルで戦うメリット。質実剛健なバスクの特殊性 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 エイバルは伝統的に闘争心を凝縮したようなチームである。今でこそ、外国人選手も所属しているが、数年前まではバスク地方の中でもギプスコア県の選手がほとんどだった。10時間以上のバス移動にも文句を言わず、お互い一体感を高め、忍耐強い戦いを追求し、どうにか強者に対抗してきた。驚くべきは、2部リーグに18シーズン連続在籍という最長記録を保持している点だろう。浮くことも沈むこともなく、というのは簡単なことではない。彼らは分を守り、おごらずに戦い続けてきた。

 09年、エイバルはとうとう3部に相当する2部Bへ降格したものの、上位を守り続け、13年には再度昇格。その翌年には1部に上がった。転んでもただでは起きない、執念と地力を感じさせる。

「エイバルの選手は共闘と清廉さをモットーとし、弱音を吐かずに戦う。だから、ガキを男にする」

 そんな定評もある。同じバスクの名門、アスレティック・ビルバオやレアル・ソシエダで才能に溺れがちな若手の貸出先としても機能してきた。世界的選手になったシャビ・アロンソ(バイエルン)はその筆頭だろう。レアル・ソシエダからエイバルに移籍し、戦う意味を実感したという。

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