乾貴士がエイバルで戦うメリット。質実剛健なバスクの特殊性

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

エイバルでここまでリーグ戦22試合に出場している乾貴士エイバルでここまでリーグ戦22試合に出場している乾貴士 スペインの北にあるバスク地方は、経済的に安定している。スペインの中では失業率が低く、治安も良い。人々は勤勉で規律も重んじる。スペイン語も話せるが、エウスケラ(バスク語)というバスク民族の言葉を話し、それはラテン語系とは共通点がない。モンゴル語系の言語に近く、文法はむしろ日本語に近いだろう。硬球を素手で壁に打ちあうペロタ・バスカがフットボールに次ぐ人気スポーツであることなど、欧州では独自な民族と言える。

 バスクフットボールもキャラクターを反映するように、質実剛健そのもの。個人で相手を抜き去るようなスキルは限定的だが、大柄な体躯や勇敢さや跳躍力に優れる。なにより、敢闘精神が目覚ましい。バスクの名門クラブ、アスレティック・ビルバオやレアル・ソシエダはそのおかげで、リーガエスパニョーラ優勝を手にしている。

「乾にとって、バスク地方でプレーするというのは大きなメリットになるだろう」

 バスクフットボールの重鎮、ミケル・エチャリは説明している。エチャリはバスク代表監督(FIFA非公認)を務め、レアル・ソシエダで強化部長、育成部長、セカンドチーム監督など重職を20年にわたって歴任。90年代にはエイバルを2シーズン、監督として率いている。

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