スペインデビューの元レイソル鈴木大輔。「ここで魂を磨いておく」 (5ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Juan Carlos Mancelas

 では、この挑戦のゴールははたしてどこにあるのだろうか?

「あえて言えば、W杯で日本代表の主力選手としてピッチに立つことですかね。このチャレンジが報われるとしたら」

 彼はデザートも、コーヒーも頼まなかった。

「でも、どんな終わりなのか、それは今の自分にはまったくわからないです。たぶん、リスクはあるんだと思います。それでも勝ち取れるもののほうが魅力的に見えました。今は自分は若いし。お金なんて関係ないですよ。ここで魂を磨いておけば、サッカー終わってからだってお金を稼げるようになっていると思いますしね。これからですよ」

 ランチを終え、ホテルのレストランを出ようとすると、小雨は土砂降りになっていた。玄関からタクシーに小走りで乗り込むだけでも、びしょ濡れになりそうだった。運転手に行く先を告げ、どっかとシートに背をもたれる。

「自分がやるしかないんですよ」

 彼は腕を組んでつぶやき、雨に曇ったままの行く手を睨みつけた。

 その翌週の3月20日、鈴木は敵地ビルバオ・アスレティック戦でスペイン初の公式戦出場を果たしている。

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