スペインデビューの元レイソル鈴木大輔。「ここで魂を磨いておく」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Juan Carlos Mancelas

 鈴木は器用にサラダをナイフとフォークでかき混ぜながら言った。季節のサラダは彩りが鮮やかで、オリーブオイルとよく絡んでいた。

「自分の場合、疑問は持たず、とりあえずはやってみるタイプなんです。例えば、(柏で監督が)ネルシーニョから(吉田)達磨さんに代わって、やろうとするサッカーは180度変わりましたが、『もっとガツガツいったほうがよくね?』みたいに文句を言わない。とにかく、やる。やってみて、必ず見えてくるものがありますから」

 彼はサラダを平らげ、パンに手を伸ばした。

「ピッチに立っているときも、同じです。例えば、タニくん(柏の主将の大谷秀和)には最初の頃、距離やサポートの部分で『ポジションが違う』ってよくキレられました。でも、そこで、自分のプライド云々なんてどうでもよく、とりあえず、言われたようにやってみる。それで次にやるべきことが見えてくるし、自分のものにできる。そこから深い話もできるようになるんです。言い方きついんで、『タニくん、言い方!』っては思っていましたけど(笑)、基本的に全部いい方向に考えるようにしています」

 彼はグラスに手をやると、ゴクリと炭酸水を飲んだ。

 その挑戦は未知数と言える。しかし、彼は勇敢に一歩を踏み出した。スペイン語は練習中のやりとりは耳に入るようになった。チームメイトとご飯を食べに行くこともある。どうにかして、話は通じる。確信はないままだが、そのやりとりが彼は嫌いではない。

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