スペインデビューの元レイソル鈴木大輔。「ここで魂を磨いておく」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Juan Carlos Mancelas

「施設とかは日本のほうが絶対に恵まれています。それにお給料も日本の選手のほうがもらっている。それなのに、サッカーのレベルは高い」

 この矛盾にスペインサッカーの難しさはあるのだろう。1部であれ、2部であれ、日本人で1シーズンを通して主力として活躍したのは、ヌマンシア時代の福田健二ただ一人である。リーガエスパニョーラは日本人サッカー選手の壁と言えるだろう。

 鈴木も入団後、冒頭の試合まではメンバー入りすらしていない。

 もっとも、鈴木は「時間の問題」と焦っていなかった。過去に所属したアルビレックス新潟でも、柏レイソルでも、最初からレギュラーだったわけではない。プレーする準備を万全に整え、本来のポジションではない右サイドバックでも実績を残し、一つ一つ階段を登ってきた。その努力が報われた成功体験を彼は知っている。

<もう少し我慢してやり続けろ。今はチームがずっと負けていないから、どうしても変えにくい>

 コーチを通し、監督の考えが伝えられた。

 それを聞いても、鈴木は一喜一憂することはない。彼は物事をひどく楽観的に捉えられる才能を持っている。いつもオープンで、人の話を聞き、何かを学び取ろうとする。いつか、その日は訪れる、と信じられる。

「いい意味で単純というか。素直なんですよ。ふてったりすることは自分は絶対にない」

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