元レイソル鈴木大輔が語る、スペインデビューまでの「激動の90日間」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Juan Carlos Mancelas

「できる!」

 いい感触も手にした。ボールのつけ方やうまさの部分を出すことができた。

 もっとも、レベルの高さも確認した。ボール回しはかなり砕けた雰囲気で、股抜きでふざけあったりするのに、ゲーム形式になると目の色が変わった。プレスは“殺しにくるんじゃないか”という迫力があった。球際の強度が違う。Jリーグでは、プレスで止まる。しかし、スペインでは勢いのままに襲いかかってくる。距離感の違いを認識した。

 練習参加は1週間だった。結果は「合格」。彼は、海外に行く、という目的を果たしたのである。

「正直に言えば、日本人と契約したことがないチームだし、センターバックは4人もいるから、どうかな、という不安はありました。だから、サインした時は、泣くくらい感動するかな、と思ったけど、割とあっさり。次の日から戦いが始まる、というのはあったと思いますけどね。めっちゃ、ホッとはしましたよ」

 鈴木はあごひげを触りながら言葉を継いだ。

「実は練習初日、コーチにいきなり話しかけられて、『俺との試合、覚えているか?』って。2013年にアジアチャンピオンズリーグのグループリーグで、中国の北京人和と対戦しているんですけど、そのときに選手だったみたいで。ナノ(・リバス)というんですけど、その時は柏が勝っているし、ベスト4になって、自分は大会のベスト11に選ばれたりして。そのコーチの印象がいいのは大きかったのかな、と思っています。そうじゃないと、アジアのわからないレベルの選手をなかなか取らないし、その意味では、“もってたな”と思いますね」

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