元レイソル鈴木大輔が語る、スペインデビューまでの「激動の90日間」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Juan Carlos Mancelas

 日々は過ぎ、1月31日には欧州の移籍マーケットは閉まったが、その時点で、具体的な話は何も進んでいなかった。所属クラブのなかった鈴木はいつでも契約することができたが、1カ月以上を無所属で過ごしていたことになる。それはプロサッカー選手にとって、非常に不安定な状態だった。

 しかし鈴木は腰を据えていた。

「移籍先が決まらない状況でしたが、待つしかないな、と。とにかく、自分の中で、海外に行く、と決めちゃってたから。それしか考えなかったし、待つのはしょうがない。行くもんだ、と思っていました」

 鈴木は快活に笑った。その表情には暗さがまったくない。柏のチームメイトは「大輔はあの明るさがいい。失敗しても、すぐ次に切り替えられる。メンタルがすごいというか」と語るが、前向きで、ポジティブで、開放的である。

「海外のクラブからはなかなかオファーが届かなくて。ありがたいことに、Jリーグのクラブからはいくつかお話をもらったんです。そうなると、自分と向き合うわけじゃないですか。考えた時に、一番したいのは厳しい環境に身をおくことだ、という答えになったんですよ。『移籍マーケットが開く夏まで日本でプレーして、それから移籍する形でもいいから』と言ってくれるクラブもありました。ありがたいですよね。でも、待ってくれ、と。自分のタイミングは今なんだ、という気持ちでした。だから、代理人に『練習参加だけでもいいから、できる海外のクラブを探してほしい』と頼んだんですよ」

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