2016.03.26

元レイソル鈴木大輔が語る、スペインデビューまでの「激動の90日間」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Juan Carlos Mancelas

 タクシーでホテルに乗り付けた彼は、玄関の正面にある自動ドアを通らず、わざわざ脇にあるノブのついたドアを開けて入ってきた。日に焼けた顔。野性味のある髭。シルバーのピアス。清潔感のある服装。日本でプレーしていたときと何も変わっていないと言えるし、何か決定的に変わった気もする。契約書にサインしてから約1カ月が経った。その前の1カ月以上は所属クラブがない状況だったことになる。

 彼はプロ選手としての危険を承知で、自分の道を進んだ。

「バカになれるか。それがすべてだったと思いますね」

 口角を上げた若者は、真っ白な歯をむき出しにした。

 今年2月、鈴木大輔(25歳)はリーガエスパニョーラ2部、ヒムナスティック・タラゴナとプロ契約を結んでいる。ナスティックと呼ばれるチームは、今シーズン、1部昇格を争う。すなわち、海外での一歩目としては悪くない条件と言える。

 しかし、契約に至るまでは綱渡りだった。

 1月1日の時点で、鈴木は柏レイソルとの契約が切れている。その後、GMから色よい返事をもらっていたラージョ・バジェカーノへ、代理人と積極的に押しかけた。しかしマドリード滞在はわずか4日で終わってしまう。現場の反対があった様子で、会長が首を縦に振ることなく、結局のところ、オファーに対する回答すらないまま帰国することに。

「練習参加だけでも」とスパイクなどを持参していたが、徒労に終わった。