負けてもポジティブ。
クロップ監督の「リバプール改革」は続く

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke  photo by AFLO

 だが、指揮官の意気込みとは裏腹に、立ち上がりのリバプールはなかなかエンジンがかからなかった。1トップに入ったFWダニエル・スターリッジは、ケガと復帰を2年近く繰り返しているせいか動きが重く、チーム全体にも小さなミスが続いて決定機を作れない。後半立ち上がりには、GKシモン・ミニョレの捕球ミスから、マンチェスター・CのMFフェルナンジーニョに先制点を決められてしまった。

 その後も、マンチェスター・Cの攻勢は変わらない。遺恨を残すマンチェスター・Cへの移籍を果たしたことで、リバプール・サポーターからボールタッチのたびにブーイングを浴びせられていたMFラヒーム・スターリングに2度も決定機を許すなど、歯車の噛み合わない展開が続く。

 リバプールのエンジンがようやくかかり始めたのは、試合終盤だった。MFアダム・ララナとFWディボック・オリジのアタッカーふたりを投入し、MFが本職のジェイムズ・ミルナーを左SBに動かす攻撃的布陣を採用すると、試合の流れはゆっくりとリバプールに傾き始めた。そして、試合終了7分前にMFフェリペ・コウチーニョのゴールで同点に追いつくと、キックオフ時から総立ちで声援を送っていたサポーターは大爆発。「俺らはウェンブリーの魔法使い」との横断幕を掲げていた彼らは一斉に発煙筒を焚き、ウェンブリー・スタジアムが赤い煙と火薬の匂いに包まれた。

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