EL16強のセビージャは、レアル、バルサより「スペインそのもの」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Reuters/AFLO

 芸術性の高いプレーヤーには、惜しみない喝采が送られる。もっと端的に言えば、ドリブルで相手を翻弄し、組み敷けるような選手は人気が高い。巧みにマーカーをはがしてみせると、「オーレ」とフラメンコや闘牛場と同じ歓声が上がるのだ。

「選手はその土地の空気によって育つもの。セビージャでは華麗なテクニックが愛されるからね。ドリブラーが多く輩出するのは必然だよ。子供の頃から、みんな技を競い合っているんだから」

 セビージャが生んだドリブラー、ホセ・アントニオ・レジェスはそのルーツをそう語っていたことがある。

 確かにヘスス・ナバス(マンチェスター・シティ)、ディエゴ・カペル(ジェノア)、アルベルト・モレーノ(リバプール)など多士済々。ちなみに同じ都市のライバルチーム、ベティスもホアキン・サンチェスのような世界トップレベルのドリブラーを何人も生み出している。

 そしてアントニオ・プエルタは、セビージャで永遠に語り継がれるドリブラーだろう。07年に試合中に心肺停止に陥り、一時回復したものの亡くなった(当時22歳)。左利きのドリブラーとしてスペイン代表に選ばれており、「あと10年は代表の左利きドリブラーは安泰だろう」と嘱望される逸材だった。今でもその若すぎる死を悼み、背番号と同じ16分になると拍手が送られる。

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