貧しくてもセリエAで旋風。エンポリがもっとも大事にしていること

  • 宮崎隆司●取材・文 text by Miyazaki Takashi photo by Getty Images

 もちろん、「より敵陣内深くから攻撃を仕掛ける」ことは、相手が最も嫌がる場所(スペース)を突くことであり、そのために、エンポリは徹底してピッチ中央エリアでのポゼッションにこだわる。

 結果、サイド攻撃の指標となるクロスの総数は、第24節終了時点でリーグ最少(クロス総数20位エンポリ=81本/1位ラツィオ=221本)となり、その一方で、シュート総数では7位(ゴール数は9位)につける成果を出している。

 もちろん、中盤中央でのポゼッションが武器である以上、その対策を敵が徹底してくるため、3−5−2、3−4−3、5−3−2、4−3−3、4−4−2といった敵のフォーメーションに応じたポゼッションの手法が細かくトレーニングされている。

 監督、マルコ・ジャンパオロはこう語る。

「我々は、常に“真摯なチーム”であらねばならない。たとえば、オーケストラでひとりでも奏者が音を外せばどうなるか? もちろん演奏は台無し。聴衆は失望し、その奏者は楽団から外される。プロフェッショナルである以上、当たり前だ。

 サッカー選手も同じ。個人にせよ組織にせよ、高い技術を備えるのはプロとしての義務。その責務を果たしたうえで初めて、創造性豊かな魅せるプレーが可能になる。だからこそ私は、高いレベルの『Lettura collettiva(レットゥーラ・コッレッティーバ/組織・チームとしての状況判断)』を追求し続ける」

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