コリンチャンスに合格した「雑草ドリブラー」蒔田泰広とは何者か (4ページ目)

  • 栗田シメイ●文・撮影 text&photo by Kurita Shimei

 コリンチャンスのU-17世代は現在、「史上最強」といった呼び声があるほどハイレベルなチームで、ブラジル国内屈指の強豪だ。16歳でトップ登録された日系人のファブリシオ・オオヤらを擁し、ブラジルの全国大会で優勝。スペインで行なわれた国際大会に出場すると、バルセロナ、アトレチコ・マドリードなどのユースチームを撃破した。

 まだ試合出場は叶わなくとも、蒔田はそのチームの一員である。ブラジルの将来を担う面々と連日しのぎを削っている。そのU-17チームの指揮を執るマルシオ・ザナルディ監督は、蒔田の将来性を高く評価している。

「(蒔田は)パワー、フィジカルなどにおいて課題はあるものの、スピードとドリブルには魅力的なものがある。高いポテンシャルを秘めた、いい選手だ」

 そんな蒔田のブラジルでの生活をサポートしてきたのは、横浜市で活動する育成クラブ『C.O.J.B.』の代表でもある今野英一氏。今野氏自身、現役時代はブラジルでプロ選手としてプレー。ブラジルにパイプを持っていて、『C.O.J.B.』からもこれまで複数の選手たちをブラジルの各クラブに送り込んできた。今野氏によれば、ブラジルにおけるハングリーかつ厳しい環境こそが、日本人プレーヤーの劇的な成長を促すという。

「日本にいるときから、蒔田はスペースがある場面でのプレーには光るものがありました。そして、本人はプロになるための高い意識を持っていました。ならば、世界水準の国のサッカーを早くから体感することで、大化けする可能性もあるのではないかと思えて、(彼に)ブラジル行きを勧めました。

 ただ、ブラジルに渡った当初は、どう転んでもコリンチャンスのような名門クラブに受かるような選手ではありませんでした。それが、出場機会を得られる街クラブからスタートして、そこで結果を出すことで自信をつけ、厳しい環境の中でのプレーに適応していきました。同時に、常に上を目指すイメージも大切にしていました。(蒔田は)生まれつきの才能に恵まれていたわけではありませんが、目標に向かってブレずに努力できる才能、本番で力を発揮できる才能を持ち合わせていたからこそ、今の地位を手にしたと言えるでしょう」

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る