ジダン初陣でレアル大勝。史上類を見ない「カンフル剤」の効果 (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 試合後の記者会見では、寡黙だった現役時代と何ひとつ変わらぬ、はにかんだ笑顔で記者の質問に答えていたジダン。強豪チームの監督といえば、どこに真意があるのかわからない、記者を煙に巻くような海千山千の猛者が多い。だが、真摯に答えを探してコメントをするフランス人監督に今のところその雰囲気はなく、いい意味での初々しさが残っている。記者のほうも、まずは自分の名前を覚えてもらおうと挨拶から入るなど、1週間前までのピリピリした雰囲気は消えていた。

 監督交代はカンフル剤となるものだ。だが、今回ほど大きな効果があった監督交代があっただろうか。もちろん、まだ1試合を戦っただけであり、評価はシーズンを通してチームが成功を掴んだかどうかで判断すべきだ。だが、そんなことを忘れそうになるほど、「俺たちのジダン、俺たちのレアル・マドリードならきっとやってくれる」という、圧倒的にポジティブな雰囲気がチームを包んでいる。

 出場停止中だったMFチェリシェフを起用したことでレアルはコパ・デル・レイ(国王杯)を失格となったが、それすらも自らのコンセプトをしっかりと落とし込む上で必要な時間的余裕と見られている。チームにとっての不幸すらも追い風となってジダンを後押ししている。ジダンとしては、この何でも許されるような雰囲気があるうちに、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントが始まる2月までには、しっかりと自分の色を出したいところだろう。

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