ヒディンク・チェルシーの目標。「ファン・ハールのマンUに勝つ」

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 今回ヒディンクの引き継いだチェルシーが順位を上げることは、ほぼ間違いない。それはヒディンクの手腕というよりは、チェルシーがあまりに下位にいるからだ。これほどいいチームが15位前後という今の順位で終わるとは考えにくい。1月の移籍市場では、大型補強に乗り出すことも考えられる。

 仮にモウリーニョがあのまま監督を続けていても、おそらく順位は上がっただろう。しかし、この先チェルシーが成績を上げれば、ヒディンクの手腕のたまものと評価される。大半の専門家は監督の力を過信しているからだ。

 ヒディンク自身は、そんな過信はしない。彼は自分がそれほど重要な立場にいると思っていない。勝利をたぐり寄せるのは監督ではなく、たいてい選手の力だということを、ヒディンクは知っている。

 キャリアを締めくくる最後の仕事でヒディンクに必要なのは、プレミアリーグでの順位を上げることと、何らかのトロフィーだ。理想的にはチャンピオンズリーグでの優勝だが、それがかなわなければ2009年にヒディンクがなし遂げたFAカップ優勝の再現でもいい。

 そんな目標に向かう過程で、ヒディンクは古くからのライバルであるルイス・ファン・ハールを叩きつぶすこともいとわないだろう。ヒディンクとファン・ハールは1970年代からお互いを知っている。当時はふたりともオランダの小さなクラブでプレーし、ふたりとも優雅だけれど動きの遅い中盤の司令塔だった。ともにいわゆるセミプロの選手で、どちらも学習障害のある子どもを指導するジムのコーチを務めて生活していた。

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