強いバルサの本質。3ゴールより凄みを感じたスアレス「鬼の追走」 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 その昔、ヨハン・クライフはバルサのコンセプトについて「相手陣内でひたすらプレーすることだ」と述べ、こう続けた。「そのためにはいち早くボールを奪い返す。そしてサイドを有効に活用した攻撃を仕掛ける」。

 サイドで奪われれば、真ん中で奪われるよりピンチになる危険は低い。バルサの特徴であるサイド攻撃には、並行してリスク回避の意味も多分に含まれているのだが、それはともかく、2点目のキックオフ直後に見せたスアレスの追走も、バルサを象徴したプレーになる。ボールを最適な場所で奪われ、奪われればすかさず取り返す。プラス10%の秘訣はここにある。

 ルイス・エンリケが試合後の監督会見でスアレスについて述べた最初の言葉はこうだった。「ゲームを組み立てることが巧い選手だ」と。世界屈指のストライカーを指して優秀なゲームメーカーだと評したのだ。

 人の気を引く、興味深い言い回しではあるが、この試合を見ていると、まさにその通り。言い得て妙だと納得させられた。イニエスタの要求にスアレスが応えるのではなく、スアレスの要求にイニエスタが応えている感じなのだ。

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