「パスをだらだら回すだけ」のオランダ代表に今、必要なこと

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 シュトゥットガルトの監督を今年退任したオランダ人のフーブ・スティフェンス(外国のビッグクラブで指揮をとるオランダ人はもうほとんどいない)は、オランダの新聞NRCハンデルスブラットにこう語っている。「もちろん私は、ポゼッションを重視している。そのためにはまずボールを奪わなくてはならないが、オランダにはボールを奪える選手がいない」

 加えて、オランダの前線にはエゴイストがいない。オランダのストライカーは、ドリブルやシュートではなく、とにかくパスをするよう教えられる。ロッベンだけはドリブラーになった。それは彼が、オランダの主要クラブから離れた、ドイツ国境に近い北部の小さな村で育ったためだ。

 ロッベンの後継者候補であるメンフィス・デパイとリカルド・キシュナは、オランダの主要クラブで衝突を繰り返している。PSVアイントホーフェンは長いことデパイをつなぎとめるのに苦労したが、この夏とうとうマンチェスター・ユナイテッドに放出した。アヤックスもこの夏、キシュナをラツィオに厄介払いした。

 オランダでは、個人主義者のストライカーは誤ってつくり出されたような存在だ。前フェイエノールト監督でオランダ人のフレット・ルッテンに言わせれば、今のオランダ人選手は自主性を重視するフース・ヒディンクのような指導者より、ルイス・ファン・ハールのように何をすべきかをきちんと指示する監督の下でプレーしたほうが力を発揮する。

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