「パスをだらだら回すだけ」のオランダ代表に今、必要なこと (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 オランダでもベテラン選手は「独特の力」を持っている。アリエン・ロッベンのドリブル、ウェズレイ・スナイデルのシュート、ロン・フラールの脚力、ロビン・ファン・ペルシーのゴールへの嗅覚......。しかし30歳以下のオランダ人選手には、そうした力がない。この世代は、タックルやシュートやロングパスの練習を長時間繰り返したことがない。オランダ人選手は、みんなショートパサーとして育てられる。ショートパスがフットボールのすべてと考えられているからだ。

 かつてのオランダのフットボールは、ショートパスだけではなかった。2004年までの30年間ほど、オランダのスイーパーは世界最高のロングパスを出していたはずだ。最初はルート・クロル、次がロナルト・クーマン、そしてフランク・デ・ブール。しかし、彼らの後継者がいなかった。今のオランダは後方からパスをつなぐしかない。

 しかもオランダは、マンマークを過小評価するようになった。今ラツィオにいるステファン・デ・フライがフェイエノールトでプレーしていたとき、彼は自分も含めた若いオランダのディフェンダーが外国の同じポジションの選手より貧弱な体をしていることに気づいた。そこでデ・フライは自分からジム通いを始め、体を鍛えた。だがそれを知ったフェイエノールトは、なぜかデ・フライにジム通いをやめさせた。

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