W杯予選未勝利のアルゼンチン。「天の恵み」もブラジルにドロー

  • 三村高之●文 text&photo by Mimura Takayuki

 アルゼンチンにとって頼みの綱は天の恵み。試合日の天気予報は豪雨だった。大雨が降ってピッチがぬかるみ状態になれば、ショートパスは通らず個人技の多くも封印される。そうなれば共に持ち味は発揮できず、ブラジルが有利とされる攻撃力の差がほとんどなくなる。そしてロングボールの蹴りあいと肉弾戦になれば、激しさでは一日の長があるアルゼンチンに勝機が生まれる、というわけだ。

 おそらく、国民の多くが天気予報の的中を願ったに違いない。そしてその願いは天に通じ、夕刻から土砂降りとなった。しかし皮肉にも、あまりの豪雨により試合は翌日に延期され、正常なピッチで行なわれることとなってしまった。

 圧倒的に不利といわれる中、試合はアルゼンチンが立ち上がりからライバルを圧倒した。駒不足に苦しむマルティーノ監督は4-1-4-1の布陣を採用し、DFより前にはボランチ3名、FW3名を起用した。そしてこの6人の献身的な活動量と徹底した連係が、流れを一気に引き寄せた。

 4-2-3-1のブラジルも中盤は厚いが、素早いプレスを忠実に繰り返すアルゼンチンが優位に立つ。ボールを奪うと、常に複数のトライアングルを作ってパスコースを増やす。苦戦どころか、アルゼンチンが完全にゲームを支配した。"崩し"に人数を割き、ゴール前が薄くなったことでなかなか有効なシュートまでは持ち込めないが、スタンドは繰り返されるアタックに熱狂モードに。そしてついに33分、ボランチのバネーガがボールを奪うと、そこからFWトリオのディ・マリア→イグアイン→ラベッシと渡り、ラベッシのシュートで均衡を破った。

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