乾貴士、エイバル移籍。鬼門の地スペインで戦うには何が必要か (5ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by AFLO

 しかしドリブルは一本調子になりがち、90分間を通してだと諸刃の剣にもなり得る(ショートカウンターを浴び、プレーテンポを悪くすることも)。ドリブラーにありがちな“自分一人で問題を解決しよう”という焦りも垣間見える。外から中に切り返してのドリブルでシュートの形やリズムに固執し、能力の高いディフェンダーには読まれてしまう。ドリブルがアピールポイントなのは否定しないが」

 エチャリはバスク代表(FIFA非公認)監督でもあり、地域の特性を知り尽くしているだけに、その言葉は重い。90年代にはエイバルを監督として指揮。バスクの雄、レアル・ソシエダで20年近く強化や育成に関わってきた人物で、その眼力の高さはかつてジョゼップ・グアルディオラが真っ先に戦略スカウトとして打診したほどだ。

 乾には選手としての引き出し、スキルを使う知性が要求されるだろう。

 単刀直入に言えば、フランクフルト時代のままでは歯が立たない。単純なボールスキルの高さはチームでも上位を争い、最初の見栄えは良いだろう。しかし、相手は今の乾を止める手立てをすぐに見つけてくる。そこで連係によって崩せる幅の広さが必要だが、語学力の問題もあって信頼関係構築には時間を要する。そもそもスペイン人は言葉のコミュニケーションが取れないアジア人をあからさまに軽視する。この“差別”も、スペインで日本人が苦しむ理由の一つなのだ。

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