アヤックスを救えなかった「現代サッカーの創始者」 (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 しかしラポルタが当選していても、バルトメウと同じくクライフには決定権を与えず、クラブのお飾りに据えたかもしれない。レアル・マドリードでアルフレッド・ディ・ステファノが長く担った役割だ。クラブの宝として愛され、いつもスタジアムで姿を見ることはできるが、もう誰もその声に耳をかたむけようとはしない......。

 実際、もうバルサはクライフを必要としていない。彼は方向性を見失っていたクラブを何度か救った。しかし今のバルサは、ほとんど無敵だ。名前の頭文字から「MSN」と呼ばれるメッシ、スアレス、ネイマールの3トップを抱える今、バルサの伝統だったパスとプレスの戦術は重要性を失った。メッシが相手選手を3人抜いて出したパスから、ネイマールがゴールを決めるのは、クライフ流のフットボールではない。

 だが幸いなことに、世界のフットボールに対するクライフの影響力はどんなクラブよりも大きい。バルセロナの育成組織マシア、スペインの「ティキタカ」と呼ばれるパスゲーム、世界を制したドイツのワンタッチの素早い攻撃は、いずれもクライフがいたから生まれたものだ。

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