痛しかゆし? 名将たちが編み出した「メッシの止め方」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 実は成功したケースがある。そこにはモウリーニョが使ったデル・オルノの失敗も一つの教訓となっている。

 2006~07シーズンのCL決勝トーナメント。カンプ・ノウに乗り込んだリバプールを率いていたのは、ラファエル・ベニテス監督だった。緻密なデータを使った戦術に優れる実務家は、周囲が驚く決断を下した。本来は右サイドバックのアルベロアを左サイドバックで抜擢。アルベロアは、それまで一度たりとも左サイドバックとしてプレイしていなかったにもかかわらず、だ。

「試合前日にビーチを散歩していたとき、ラファ(ベニテス)が話を持ちかけてきた。『左はできないか?』ってね。一度もやったことがなかったから、正直驚いたよ。でも、ラファが説明したのさ。『メッシは、そもそも背負ってもボールを受けさせないようにしないと危ないが、すべてを防ぐことはできない。その上で、彼は執拗に中に入ってくる。なぜなら左利きだから。そこで我々はダメージを受けてしまう。だから右利きの君が、中央に入ろうとするメッシの左足を切り、動きを封じるんだ』とね。自分はその指示に従い、忠実にプレイするだけだった」

 この試合、アルベロアは粘り強くアルゼンチンの小さなアタッカーに密着し、中へ入ろうとする左足の“通路”を粗漏(そろう)なく断ち切った。

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