混迷する世界王者。「ドイツの時代」は早くも終焉か...

  • 鈴木良平●解説 analysis by Suzuki Ryohei text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 一方、クローゼの引退も、代表にとっては痛かった。実践するサッカー自体に大きな影響を及ぼしているからだ。

 グアルディオラ監督時代のバルセロナのサッカーに憧れているレーヴ監督だが、基本的には手数をかけずに縦に速いサッカーでゴールを狙うスタイルを標榜している。ブラジルW杯でも、そのサッカーで世界の強豪国を一蹴し、頂点に立った。

 そんなサッカーのスタイルにおいて、1トップのクローゼは適任だった。点取り屋であると同時に、足もとの技術もしっかりしているので、前線の起点となってうまくボールをさばいていた。そこから再度、ゴール前に入って行くプレイにも長(た)けていた。

 要するにクローゼは、チームの縦への速さを殺すことなく、自らも周囲が作る攻撃スピードに乗りながらプレイすることができた。得点力だけに限らず、クローゼはそうした強みを持っていたからこそ、レーヴ監督も重宝して使っていた。

 しかしW杯後、クローゼの後釜として1トップに起用されているFWゲッツェ(バイエルン)は、レーヴ監督が志向するサッカーには合っていない。W杯決勝のアルゼンチン戦でゴールを決めた国内きってのスター選手だが、ドリブルやパスなど抜群のテクニックが売りで、前で簡単にさばくようなタイプではない。そのため、彼のところにボールが入ると、どうしても攻撃に時間を要してしまうのだ。

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