渦中のブラッターFIFA会長はなぜ再選されたのか (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 僕はこの投票の直前に書いた記事で、カタールを本命候補にしたブックメーカーのウィリアム・ヒルをさんざん批判した。FIFAの評価報告書も、カタールの猛暑は「選手、関係者、観客の健康を脅(おびや)かしかねない」と書いていた。僕はロシア(18年)とアメリカ(22年)が勝つと予想した。

 僕の予想ははずれた。ほかの欧米のジャーナリストや専門家も、ほとんどが僕と同じだった。国際プロサッカー選手会(FIFPRO)のテオ・ファン・セヘレン会長はこう語る。「私はそれなりに情報が入ってくる立場にいるが、あの投票結果は驚きだった」

 そこからわかったのは、FIFAはむき出しの権力と金以外には関心がないということだった。ロシアの指導者ウラジーミル・プーチンの存在は、投票権を持つ理事会メンバーには大きかった。カタールはフットボールにからむプロジェクトなら、世界のどこのものでも金を出した。

 しかも当時のFIFA理事会メンバー24人のうち、3分の1以上はこの投票にからんで賄賂を受け取ったとされ、フットボール界から追放された者もいた。FIFAのジェローム・バルケ事務総長はリークされたメモに、カタールがワールドカップを「買った」と書いていた(後にバルケは、この言葉は誤解されていると主張した)。英サンデー・タイムズ紙は昨年、カタール人のモハメド・ビン・ハマムが、カタールへの支持を勝ち取るために計500万ドル(約6億円)を使ったと報じた。

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