内田篤人の現在。シャルケと日本代表の間に生じた悲しき溝 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Getty Images

 だが結局、内田のたっての希望と日本での診断により手術は回避、W杯に間に合わせた。この頃の内田は繰り返し、シャルケが自身の判断を尊重してくれたことへの感謝を口にしている。本来であればW杯を諦めて次のシーズンに備えて欲しいのは分かりきったことだからだ。一方、シャルケ側も「日本代表とは良い関係だ」と強調していた。クラブ、代表、そして内田本人が合意の上でW杯を目指した。結果的にブラジルで最も戦えていたのは内田だった。

 2014~2015シーズン、内田は遅れて戦列に復帰した。膝の具合が悪く、左右の脚で筋肉量のバランスが狂うなど、整えるべき点が多かったからだ。シャルケはこれを、早期の戦線復帰の代償と捉えたようだ。前半戦を終え、今年1月のアジアカップは回避。シャルケのカタール合宿にも参加せず、ドイツ国内でリハビリに専念した。

 年明けの後半戦はフル出場を続けたが、膝の痛みは消えなかった。2月、チャンピオンズリーグのレアル・マドリードとの第1戦と、リーグ戦で最も盛り上がるドルトムント戦という内田にとって最大のモチベーションとなっている試合にはフル出場。だが、3月10日のレアルとの第2戦は、自らの意向によってベンチスタート。81分からの出場となったのはやむを得なかった。

 この試合の2日前、内田はディマッティオ監督に「膝の調子が悪いから先発は無理」と告げている。内田にとっては、この大勝負のために1シーズンを送っていると言っても過言でないCLのレアル戦。その試合に出られないと言うのは、よほど膝の具合が悪いということだ。

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