安い買い物だったマンU。クラブは金儲けの手段になった (5ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 そして、グレイザー家は未来を体現している。イングランドのフットボールは歴史上初めて、儲かるビジネスになった。昨シーズン、プレミアリーグの20クラブの収益の合計(税引き前)は1億9000万ポンド(約330億円)という記録的な額に達した。デロイトによれば全クラブ合計で収益が出たのは、15年ぶりだという。ほかにもアメリカ人がクラブ買収に乗り出している。グレイザー家が手にした利益を追い求めてのことだ。

 残念な話である。フットボールクラブの目的は利益を出すことであってはならない。企業は株主を金持ちにするために存在する。しかしフットボールクラブの顧客(つまりファン)と従業員(選手や監督)のほとんどは、クラブの存在意義はいいプレイをして勝利を手にすることだと言うだろう。

 利益を第一に求めるビジネスマンは、大英博物館を買うことはできない。同様に、マンチェスター・ユナイテッドを買うことも許されるべきではない。しかし、フットボール界ではそれが認められている。グレイザー家はそこに、誰も見つけられなかった金儲けのタネを見つけたのだ。

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