レアルがCLベスト4。チチャリートの涙が教えるもの (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 スタジアムを包む歓喜の雄叫びの中、チチャリートはコーナーフラッグへ膝から滑り込み、大の字になって喜びを爆発させた。押し重なってくるチームメートの祝福、ベルナベウに成り響く自身を賞賛するコール。それらを体全体で感じる至福の時が、辛いシーズンを過ごしてきた彼を包んだ。

 今季、マンチェスター・ユナイテッドから移籍。しかし出場機会の少なさから、何度もチーム退団の話が紙面を飾り、そのたびに「マドリードで何も問題はない。自分がすべきことは、チャンスが来た時のためにしっかりと準備をすることだけ」と否定をしてきた。だが母国メキシコでは、ふと心のたがが外れ、固定したメンバー起用を続ける指揮官アンチェロッティに対して不満をこぼしたこともあった。

 そのチチャリートは試合終了直前に交代すると、ベンチで人目も気にせず涙を見せた。涙の理由はわからない。だが、控えGKケイラー・ナバスの背中でむせび泣くその姿は、自分がレアル・マドリードという世界トップクラスの選手が集まるチームでもプレイする力があることを証明できたことの安堵感と、チームに貢献できたことへの喜びが入りまじったもののように見えた。

 レアル・マドリードの5年連続CL準決勝進出を決めたチチャリートたが、今後も先発で起用されるという保証は何一つない。ただ、腐ることなくしっかりとサッカーに取り組み続けた彼は、このゴールにより、マドリードサポーターの心の中で大きな存在となり、今後も語り続けられることだろう。

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