CLダービーはドロー。レアルを苦しめるシメオネの信念 (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 この日の会見で唯一笑みがこぼれたのは、アトレティコのFWマンジュキッチのレアルDFカルバハルへのファールを「見ていない」と話した時ぐらい。「今日のアドバンテージは強敵相手には意味のないものになる可能性がある」と、慎重な姿勢を崩さなかった。そして第2戦は第1戦以上に難しい試合になると、気持ちを引き締めた。

 もちろん記者の前と選手の前で見せる態度、語る内容は違うだろう。だが、このシメオネの浮かれることなく試合に挑む姿勢こそ、アトレティコが好不調の波の激しい、歴史だけが壮大な名門であった時代に別れを告げ、欧州王者を目指せるチームへと成長した一要因と言える。

 スペインサッカーの中で今、ブームとなっているのが、"目の前の試合、そして次の試合"と言う彼のフレーズだ。「一番大事なのは目の前の試合である。万全の準備を行ない、その試合で結果を出すことが大きな成果につながる」と語り続けたシメオネのサッカーに対する信念とも言えるもの。勝利を手にするためにはどの試合も奢ることなく全力で挑まないといけないという勝者の哲学がこのフレーズには要約されている。

 シメオネが就任する以前のアトレティコには、このしつこいとさえ思える勝利への執念を感じることができなかった。だからこそ、好調の時は勢いに乗って勝利を重ねるものの、1度負のスパイラルに落ち込むと簡単にチームの軌道修正を行なうことができなくなり、レアル・マドリードに14年間勝ち星なし(2013年まで)という暗黒の時代を過ごしていたのだろう。

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