高騰する放映権料。テレビでサッカーが見られなくなる日 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 テレビ観戦派のなかにも、スタジアムに出かけるファンと同じくらい熱心な人たちは大勢いる。スタジアムへ行くファンは、単に金銭的にゆとりがあるか、スタジアムのそばに住んでいるか、子育てや家事から手が離れて時間に余裕ができた人かもしれない。

 それでもファンが何かを要求するときは、たいていの場合、スタジアムへ出かける比較的少数の人たちの利益をめざしている。イングランドのフットボール・サポーター連盟は各クラブに対し、テレビ放映権による増収が見込まれる分、観戦チケットを安くするよう求めている。これでは、テレビで観戦するファンはスタジアムへ行くファンのために存在すると言わんばかりだ。

 チケットの高騰が原因でスタジアムに通えなくなるファンが増えるのを心配するのは、もっともなことだ。しかし、テレビで観戦する数百万人のファンが経済的な理由から試合を見られなくなることを心配するのも、同じようにもっともな話だ。

 まさに今、そうした現象が進んでいる。テレビでフットボールを見ることは大衆的な娯楽から、贅沢なエンターテインメントになろうとしている。オクステラ・コンサルティング社が行なった調査では、プレミアリーグが2月に大変な金額で放映権を売る前でさえ、イギリスのテレビ視聴者の3分の1が視聴料を払うことを負担に感じていると答えた。

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