ミラン番記者が語る「本田にブーイングを浴びせた集団の正体」 (2ページ目)

  • クリスティアーノ・ルイウ●取材・文 text by Cristiano Ruiu 宮崎隆司●翻訳 translation by Miyazaki Takashi

 ただし、本田に強烈なブーイングを浴びせたサン・シーロ南側ゴール裏のティフォージ組織「クルバ・スッド」は、極めて政治性の強い集団であることも認識しておく必要がある。

 ここミラノでは周知の事実だが、「クルバ・スッド」は、ほぼすべてがバルバラ・ベルルスコーニ(オーナーであるシルビオ・ベルルスコーニの娘。ミランのCEO)の支持者である。つまり、反ガッリアーニ(ミラン技術部門の最高責任者=スポーツ・ディレクター)。インザーギを監督に招聘したのも、そして本田獲得も、主導者はガッリアーニである。したがって、「バルバラVSガッリアーニ」の対立が長く続いているミランにあって、ガッリアーニによって作られた現在のチームに「クルバ・スッド」は常に否定的である。

 そうである以上、今のミランが"弱小クラブ"エンポリを相手に不甲斐ない戦いをすれば、当然烈火のごときブーイングが選手と監督に向けられる。

「クルバ・スッド」は昨季、"ガッリアーニ人事"のアッレグリ監督(今季ユベントスの監督)の解任を求める声明を出し、今季もまた同様の声明を出すことでガッリアーニの辞任を求めている。そうしたクラブ内の権力闘争が、ブーイングに影響を与えていることも客観的に見ておく必要がある。

 振り返れば、アンドレア・ピルロ(現ユベントス)のミラン在籍最後となったシーズン(2010-11)に、ミランはセリエAを制した。その翌シーズンは、イブラヒモビッチ、ガットゥーゾ、セードルフ、ザンブロッタ、チアゴ・シウバ、ネスタらを擁していたため首位ユベントスに勝ち点「4」差の2位。だが、そのシーズンを最後に主力が去ると、2012-13シーズンこそなんとか3位につけたものの、首位ユベントスとの勝ち点差は「15」に開いていた。

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