快勝ドルトムント。香川真司の言葉に表れた復活の兆し

  • 了戒美子●文 photo by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 1月下旬、ドイツの雑誌シュテルンに掲載されたクロップ監督のインタビューは、香川の不調を全面的に認めるものだった。要約すれば「香川とは2年前には最高の信頼関係があった。だが、戻って来た時に以前の状態ではなく、ケガがあることも隠していた。人の時間は取り戻せるものではない(マンチェスター・ユナイテッドでの時間は取り戻せないという意味)」。

 指揮官の厳しい分析が香川本人にどう刺さったかは分からない。ただ後半戦を迎えるにあたり、アジアカップもあってキャンプにも参加できず、出遅れた状況にあることは容易に想像できた。1月中にどこかに放出される可能性もあるのではないか。あくまで噂だが、そんな声が聞こえて来た時期さえあった。

 後半戦に入っても、チームは前半戦を引きずったような戦いぶりを続けた。しかし一方で、香川には見るからに充足感が漂っていた。前半戦でメンバーから外れかけたころや、アジアカップ敗退直後の悲壮感はない。何かが吹っ切れたとしか思えなかった。

 このフライブルク戦では、オーバメヤンとの2トップで先発すると、立ち上がりから前線で激しくプレスをかけた。とにかくプレッシングでボールを奪う。相手のミスを誘う。相手のペースにさせない。ドルトムントらしい躍動感がよみがえった。

「相手がつないでくることは分かっていたので、タイミングをみはからってプレスをうまくかけられたと思いますし、またスピードの選手(オーバメヤン)がいる分、相手に対してプレッシャーがかかったと思います」

 前半9分に相手からのこぼれ球を前線でオーバメヤンがつなぎ、ロイスが決めて先制。その後、小さなミスも散見したが耐えきった。

 香川自身のシュートは2本。まずは前半5分にロイスとワンツーから受けたマイナスのパスに走り込んだもののGKの正面をついてしまった。そして同32分には、ロイスのパスに抜け出したオーバメヤンからのクロスを左足でトラップ。右に持ち替えている間にディフェンダーに寄せられ力ないシュートに終わった。惜しくも決まらなかったものの、どちらも可能性を感じるものだった。

「1本目は決めなきゃいけない。2本目はその前(左足トラップの時点)で打てたかもしれないですけど、ちょっとボールも浮いてたから。相手も見えていたので。あれが決まっていれば......。ただそれも結果論なので、決めなきゃいけなかったと思います」

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