欧州注目のクラブ。南野拓実がザルツブルクを選んだ理由 (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by AFLO

 もちろん充実しているのはハード面だけでない。むしろソフト面――つまりそのサッカーのスタイルが欧州でも注目を集め始めているのだ。南野がザルツブルクを選んだ大きな要因として挙げたのがその「アグレッシブなスタイル」だった。

 ザルツブルクのスタイルに関してカギを握っているのがスポーツ・ディレクター(SD)を務めるラルフ・ラングニックだ。ラングニックはかつてドイツの強豪シャルケなどを指揮し、縦に速く攻めるサッカーを志向することで知られた人物である。

 06年には当時3部に所属していたホッフェンハイムの監督に就任し、ボールを奪ってから素早く攻めるスタイルを掲げてわずか2年間でクラブを1部昇格に導くと、1部に昇格した初年度も前半戦を首位で折り返すなど旋風を巻き起こした。そのラングニックSDのスタイルはザルツブルクのチーム作りに反映されており、これまで招聘した2人の監督も、そのスタイルを体現できるかどうかに基づいた人選だった。

 現在のチームの礎(いしずえ)を築いたのは昨季まで2年間チームを率いたシュミット監督だ。その哲学はドルトムントのクロップ監督に影響を受けており、選手たちは豊富な運動量やプレッシング、素早い攻守の切り換え、奪ってから縦に速く攻めるなどのアグレッシブさが求められていた。2年目の昨季は数々の記録を塗り替えて国内2冠を達成。シュミットはその手腕を評価され、ドイツの強豪レバークーゼンに引き抜かれた。

 今季から指揮を取るヘッター監督もその系譜を継ぐ人物だ。オーストリア2部だったSVグレーディッヒを1年で1部昇格に導き、翌年には1部で3位に躍進させたという点ではラングニックにも似通っている。彼が目指すのも前線から猛然と相手を追い回し、ボールを奪ってから可能な限り速く相手ゴールに向かって行くサッカーだ。

 フォーメーションは固定でないものの、4バックに2トップ、両サイドにMFを配置するのは不変。左のMFとしてプレイすることになると予想される南野にも、当然強度の高いプレイが求められることになるが、そのアグレッシブさを求めてやって来た南野にとって、それは望むところだろう。

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