ドイツで報じられた日本敗退。「シンジ、顔を上げて」 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 松岡健三郎●写真photo by Matsuoka Kenzabutou

 2014年、香川はマンチェスター・ユナイテッドで出場機会がなく、復帰したドルトムントでチャンスは与えられたものの、活躍しきれずに徐々に出番を失った。そして2015年、復活のきっかけを求めたアジアカップだった。

 2戦ノーゴールで迎えたヨルダン戦。決めたゴールは実に10月28日以来約2ヵ月半ぶりのものだった。武藤嘉紀から絶好のクロスが来た時には「少し怖いというか、緊張があった」と明かした。決まりはしたものの少しコースの甘かったシュートに関しても「置きにいったというか......。でも、決めた感触を大事にしたい」と、得点から遠ざかっていたからこその感覚を、正直に口にした。そして「(チームメイトに)心配かけていたのかな」と、周囲の喜ぶ様子を見て感じたことを素直に語った。

 もちろんチームメイトも香川の不調が深刻であることは承知だった。例えば本田圭佑が「真司が取れたのは良かった」とわざわざ香川の名前をあげれば、川島永嗣に至っては「パレスチナ戦であいつが決めたと思って行ったらオカのゴールだった。今日は真司が決めて、真司のところに行けて良かった」と、喜びを隠さなかった。日本の10番がようやくゴールを決めたことに、選手たちは祝福を惜しまなかった。

 昨年11月、内田篤人が代表に参加した際、「元気のないヤツが一人いる」と、香川について語っていたことがある。チーム内でいわば"公認"された不調だったのだ。それがヨルダン戦のゴールで、少しは解消されたかに見えた。

 だが、現実は甘くなかった。ノックアウトステージに入って最初のUAE戦、香川は結果を残せなかった。最後のPKを外し、「こんなところで終わるつもりはなかった。申し訳ない」と、繰り返した。

 問題はこれからだ。今後、香川は何としても調子を戻していかなくてはならない。ドルトムントに帰ったあとも、戦いは待っている。もちろん日本代表としての戦いもこれで終わるわけではない。

「悔いしか残らないけれど、何か意味があると思う」

 その意味を探りつつ、ともかく前進するしかないのだ。

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