2015.01.02

フォロワー1000万人超。SNSの人気者C・ロナウド

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 マンチェスター・ユナイテッドのグループ・マネージングディレクターを務めるリチャード・アーノルドは、ユナイテッドが地球上のどの有名人、どのスポーツチームよりもフェイスブックに「力を入れている」と胸を張る。ビッグクラブや有名選手は、自分たちの人気をひけらかすためにソーシャルメディアを使っているわけではない。世界中に多くのファンがいることは、ずっと前から知っていた。ユナイテッドは世界に6億5900万人のサポーターがいると豪語している。しかしフットボール界が抱えていた問題は、それだけの数のファンとどうやって「つながる」かだった。

 今ではソーシャルメディアがその手段になった。フェイスブックやツイッター、インスタグラム、中国語マイクロブログの微博(ウェイボー)といったメディアのおかげで、クラブや選手はファンのデータベースを作成できるようになった。次のステップは、これらのファンがクラブに注ぐ愛情を金に換えること。これがフットボール産業の新たなゴールだ。

 一般のイメージとは裏腹に、フットボールはビジネスとしては小さなものだ。レアル・マドリードは、昨シーズンの収入が5億2100万ユーロ(当時のレートで約740億円)だったと発表した。スポーツクラブの収入としては史上最高だ。しかしフィンランド人の金融アナリスト、マティアス・モットラによれば、レアル・マドリードをフィンランドの企業の中に入れてみると、収入では120位にすぎなかった。おまけに、利益をあげているクラブはほとんどない。

 プロフットボールは零細ビジネスでしかないと聞くと、意外な気がするだろう。たいていの人がフットボールを大きな産業だと感覚的に思っている。一流選手の名は誰もが知っているし、ビッグクラブはグローバルなブランドだ。

 しかしフットボール界は、経済学で言う「専有可能性」をうまく獲得できずにいた。ファンがフットボールに寄せる愛情のうち、クラブはほんのわずかしか金に換えられない(つまり専有できない)状況だった。

 たとえばマレーシアのクアラルンプールに住む、アブドルという名のユナイテッドファンのことを考えてみよう。彼はヨーロッパに行ったことがなく、もちろんユナイテッドの本拠地オールド・トラフォードに行ったこともない。だが彼はオフィシャルなものではないユナイテッドのユニフォームを持っているし、インターネットでユナイテッドのニュースを調べ、地元のレストランのテレビでユナイテッドの試合を見る。その過程でクラブがアブドルから得られる収入はゼロだ。それどころか長年の間、ユナイテッドはアブドルが存在することも知らなかった。