勝てない香川のドルトムント。昨季のマンUとの大きな違い (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 ユルゲン・クロップは1967年生まれの47歳。2001年、現役時代にプレイしたマインツの監督になると、2004年にはチームを1部に昇格させた。2008年には低迷していたドルトムントの監督に就任。香川真司が加入した2010~11シーズンには、2001~2002シーズン以来となる優勝を飾り、翌シーズンには連覇を達成。チャンピオンズリーグ決勝進出も果たしている。ここ2シーズンもバイエルンに次ぐ2位と、決してまぐれとは言えない成績を残している。ドルトムントを躍進させた最大の功労者を、そう簡単には批判できないようだ。

 ヘルタ戦直後の記者会見では、そのクロップに対して、「あなたの会見での受け答え同様、練習もおもしろおかしくやっているから勝てないのではないか」と、少々とんちんかんな質問が飛んだ。クロップは不思議なものを見るような表情で質問を聞いていた。そして、答えが秀逸だ。

「うーん、この試合に負けて17位ですか? 監督としては返答も面白くもないわけで、このところの私のコメントも精彩を欠いていますね」

 場内を笑いのうずに巻き込んで会見を終わらせた。

 テレビで見ていても伝わるだろうが、クロップは冷静で辛抱強い指揮官であると同時に、愛情深く情熱的で、なおかつお茶目なエピソードの多い人だ。ある試合で得点を喜び、走り、飛び上がり、そして肉離れを起こしたことがあった。ベンチ前での情けない姿は、ファンを喜ばせた。この夏には植毛をしたことが話題になった。クロップが常に被っているキャップは植毛による傷跡を隠すためのものだった。ある記者会見で、記者からそのことを追及されると、耐えきれずに帽子をとって「うまくいっただろう?」と答えてしまった。

 もちろん笑わせてばかりではない。試合について記者が見解を述べると、「私が見ていたのとあなたが見ていたのでは違う試合だったのではないか」とそっけなく一蹴することもある。「練習が緩いのではないか」という質問には、「あなたは初めてみる記者だけど、そんなことが分かるのか」と詰め寄った。

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