3位浮上。マンU5連勝はフロックか、復活への序章か

  • 栗原正夫●文text by Kurihara Masao
  • photo by Getty Images

 マンUにとって不運なのは、今夏にリオ・ファーディナンド、ビディッチ、エブラといったベテランのほか、ウェルベック、香川真司、ハビエル・エルナンデス、クレバリーらを放出する一方、1億5000万ポンド(約280億円)をかけて大型補強を行なったものの、ケガ人が多く、1度もベストメンバーで戦えていないことだ。現在もディマリア、ブリント、ショー、ラファエル、フィル・ジョーンズら、トップチームだけで7人の故障者を抱え、今季のケガ人の延べ人数は43人にも上るとされる。

 誰かのケガが癒えれば、また他の誰かがケガをする。一方で、1人が何度も故障を繰り返しては、いつまで経っても復帰できない。そんな悪い連鎖が続く。補強の目玉の1人だったコロンビア代表FWファルカオが、ケガが回復してもコンディションが上がらずに、ここまで7試合に出場もフル出場がなく、ポジションを掴めず1ゴールにとどまっているのは顕著な例だ。

 ケガ人の多さについて、すでにファン・ハールはフィットネスコーチを交代させるなどの策を取っている。だがオランダ人で、かつてフース・ヒディンクが率いた韓国代表やロシア代表でフィットネス部門を担当したレイムンド・ベルハイエンのように、「その原因はファン・ハールが日々の練習で科すインテンシンティ(強度や激しさ)にあるのではないか」と指摘する声も出始めている。マンUとしては、そんな周囲の雑音を封じるためにも、12月の残り5試合、プレミア恒例の過密日程をうまく残り切りたいところだろう。

 かつてアヤックスやバルセロナ、バイエルンで結果を出し(いずれもリーグ制覇を経験)、ブラジルW杯でもオランダ代表を3位に導くなど、名将と称賛されてきたファン・ハールだが、マンUでのここまでのチームマネージメントを見る限り「過去の人」と言われても否定するのは難しい。

 だが、いくら内容が悪くても、勝ち続けることで、チームは自信を手にし、成長するもの。もちろんリーグ優勝を狙うなら、前線と左サイドにタレントが集中し、守備的MFより後ろのポジションを安心して任せられる人材に不足するなど、メンバー構成のバランスの悪さは否めない。だが年明けには移籍マーケットも開くだけに、適切な補強とケガ人の復帰でベストの11人をピッチに揃えられれば、今後の期待は膨らむ。

 前出のベルハイエンも、ファン・ハールのやり方に疑問を抱きつつも「インテンシティを求め過ぎることは(選手の疲労やケガにつながる)短所にもなるが、バランスをうまく取れば、選手が慣れてきたときに効果が出始めるかもしれない」と話している。リーグ後半戦に向け、チーム状態が一気に上向く可能性も否定はできない。

 5連勝はフロックか、それとも『赤い悪魔』復活への序章か。昨季から続く長い迷走から抜け出すためにも、ファン・ハールとマンUにとっては勝負の年末となる。次節のカードは14日、オールド・トラフォードでのリバプールとのナショナルダービーになる。チャンピオンズリーグでグループステージ敗退が決まったリバプールを踏み台に、マンチェスター・ユナイテッドがさらに連勝を伸ばせるかに注目したい。

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