メッシまたも金字塔。足掛け10年、通算253得点の歩み (2ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi photo by Getty Images

 今から約10年前の2004−2005シーズンに17歳でリーガデビューを飾ったメッシが、ここまでの選手になると誰が想像しただろうか? もちろん、クラブの育成スタッフやフロントは夢を抱いていたかもしれないが、27歳にしてこれだけの記録を塗り替えるような選手になるとは思ってもみなかったはずだ。

 おそらく、メッシが覚醒するうえでの最大のターニングポイントは、"ペップ"グアルディオラが監督に就任した2008−2009シーズンのことだと思われる。実際、それまでのメッシは異次元のプレイを見せるものの、頻繁にケガに悩まされ、シーズンを通してハイパフォーマンスを見せることができないでいた。

 ところがそのシーズン、それを見たペップがメッシに食生活の改善を促(うなが)すと、食物繊維を多く摂取するようになって体質が変化。その効果もあって、初めてケガをせずにシーズンを過ごすことに成功したのである。

 その年、リーガ31試合出場23得点、チャンピオンズリーグでは12試合で9得点をマークして得点王に輝き、チームの3冠達成の立役者となったのは、その証(あかし)とも言える。

 以降、ほとんどケガをしなくなったメッシは、毎シーズンに渡ってゴールを量産し、2011−2012シーズンにはリーガ年間50得点という、とてつもない記録を残している。ブレイクした2008−2009シーズンから昨シーズンまでのわずか6シーズンで、メッシがリーガで積み上げたゴールは、212にも及ぶのだ。約15年かけて251得点をマークしたサラと比較すると、次元の違いがよく分かる。

 これまでメッシが決めた数々のゴールの中で、最も有名かつインパクトが強かったのは、2007年4月18日のスペイン国王杯準決勝・第1戦ヘタフェ戦で決めた「5人抜きゴール」だろう。

 このとき、メッシがドリブルを開始したのは、ハーフウェイラインから数メートルほど離れた自陣右サイドのエリア。そこで相手をひとりかわしたメッシは一気にドリブルを加速させ、次々と相手を抜き去り、あっという間に相手ペナルティエリアに侵入。最後はゴールキーパーもかわして、ボールをネットに突き刺したのである。

 それは、1986年ワールドカップ、メッシと同じアルゼンチンの英雄----ディエゴ・マラドーナがイングランド戦で決めた伝説の5人抜きゴールと瓜二つと言っていいシロモノ。かねてからマラドーナと比較されてきたメッシとしても、面目躍如さながらのスーパーゴールだった。

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