ドイツ日本人所属チーム最上位。清武弘嗣はなぜ復活したか (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by Getty Images

 すると清武が奮起する。第9節のドルトムント戦(10月25日)では直接FKから今季初ゴールを決めると、結局それが決勝点となりチームの連敗をストップ。前節のヘルタ戦(11月7日)ではCKから先制点をアシストし、さらに後半には自ら追加点を奪う活躍を見せた。清武はなぜ輝き始めたのだろうか?

 清武が輝き始めた要因。それこそ清武が「やんちゃさ」――リスクを恐れず、相手に挑むように攻撃を仕掛ける積極性――を取り戻したことにある。

 もちろん、シーズンも中盤戦に差し掛かり、単純に清武がチームに順応したということも要因の1つではあるだろう。ただ、それだけではロンドン五輪からニュルンベルク加入直後にかけて見せていた迫力が最近の清武に戻ってきたことを説明することはできない。

 ニュルンベルクで下位に沈んだ昨季、清武は良くも悪くもボールを大事にしすぎるようになった。当然、ボールを失わなければ相手に攻撃されることはない。だがボール保持に固執し、可能性が五分五分という場面で思いきったプレイを躊躇(ためら)ってしまえばチームの攻撃は遅れる。ボールを大事にしすぎることはチャンスの芽を自ら摘み取ってしまうことにもなるのだ。

 近年のブンデスリーガのトレンドとして、縦に速い攻撃を持ち味とするチームが上位に進出しているということがある。ハノーファーもその1つに数えられる存在で、昨季後半にコルクート現監督が就任すると、高い位置でボールを奪ってはショートカウンターを仕掛ける戦いで、前半戦の不調を払拭してみせた。

 しかし、今季は攻撃陣のメンバーが大きく変わったことでそのコンセプトは薄れる。上位に位置しながら得点数はリーグで下から2番目というハノーファーの状態は、なかなか攻撃のスピードが上がらないという要因も影響していた。

 だが、相手の意表を突き、慌てさせ、翻弄するような清武の「やんちゃさ」がハノーファー攻撃陣を活性化させた。今季初ゴールを奪ってからというもの、相手DFを翻弄するドリブルを仕掛け、意表を突いたパスを送り、予期しないタイミングで自ら飛び出すといったプレイが多く見られるようになった。ヘルタ・ベルリン戦でも、1タッチで前を狙うようなシーンが多かったことについて、清武は「相手の裏が空いていたので、それを狙っていた」と語っている。清武が早いタイミングで前線にボールを入れることでハノーファーの攻撃には前への推進力が生まれていた。

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