ドルトムント連敗ストップも、香川真司が語った深いジレンマ (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 8戦勝ちなしというのはドルトムントにとってまさに異常事態だった。この間、アウェーでドルトムントを破ったマインツの岡崎慎司は「ドイツに来て初めてドルトムントに勝った」と喜んでいた。ハンブルガーやシュツットガルトといった下位チームにもあっさりと敗れた。

 香川は負け続けていた間、「ブンデスでは研究されている。引かれた相手を崩すのが課題」と語っていた。この日破ったボルシアMGは、質の高い守備からカウンターという、ドルトムントが最も苦手とするタイプで、実際に昨季は2戦2敗。しかも現在、バイエルンに次ぐリーグ2位と好調を維持している。それだけに喜びもひとしおだったのだ。

 だが、それはあくまでチームとしての話。香川自身は、加入当初からの苦境に変化があるわけではない。おそらく勝てたからなのだろう、感じているジレンマが自然と口をついた。

「前からのプレッシングや、セカンド(としての役割)というのはすごく指示されていた。でも、それだけしかやれなかった部分はありました。いろいろと思うことはありますけど、とりあえず勝てたことをすごく喜びたいです。ただ、やはりあらためてこういう戦いの中では、個の力が必要だと痛感する試合でした」

 香川は比較的、表情や口調にそのときの気持ちが素直に出てしまう選手なのだが、この日は表情や口調は、穏やかながら、まさに彼の心境そのものだった。

 トップ下でプレイする香川には、パスの出し手となり周囲を生かすことと、逆に自分がゴール前に入り得点に絡むことの両方が求められる。だが、彼の周囲でプレイする前線のロイス、オーバメヤンは俊速タイプ(特にオーバメヤンは20メートルであればウサイン・ボルトをしのぐと言われる)。また、ミキタリアンもドリブルからゴール前に入る推進力の強い選手。香川はそんなスピード感に、もどかしさを感じている。

「もう2ヵ月もやっていますから、このスピード感に慣れると言ったら変ですけど......。もっとそこ(ゴール前)に入って行かなきゃいけないですし。最後、シュートまでもっていったり、ペナルティエリアでゴールにつなげるという意味ではちょっと物足りない。あまりそういう場面が僕自身にはないので、自分の動きの質だったり呼び込み方の問題なのかなという感じがします」

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