名将マルセロ・ビエルサが「マルセイユ革命」を起こす! (2ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi photo by AFLO

 そんな状況で迎えられたビエルサだったが、就任会見で、「攻撃に多くの時間を使う」と宣言すると、これまで自らが貫いてきたスタイルをマルセイユでも実践。シュート数やボール支配率の数字が常に低かったエリー・ボー時代とは180度異なる攻撃サッカーを実現するために、プレシーズンの段階からハードなトレーニングを重ね、得意の3-3-3-1を基本にチームを徹底的に鍛え上げて開幕戦に臨んだ。

 ところが、その開幕戦ではクロード・マケレレ監督率いるバスティアに3-3のドロー(マケレレは成績不振により第12節終了時点で解任)。たしかにシュート数は増加し、攻撃力がアップした印象はあったが、3人で守る最終ラインはバラバラで、守備バランスは最悪。マンマークは破たんし、3-3-3-1はとても機能しているとは言えなかった。

 その傾向は0-2で敗れた第2節・モンペリエ戦でも続き、第3節のギャンガン戦は勝利したものの、モンペリエ戦同様、後半途中に4-2-3-1にシステムを変更して、なんとかバランスを保つのが精いっぱい。とりわけ、攻撃を得意とするSBブリス・ジャ・ジェジェの守備時におけるポジショニングの悪さと集中力を欠いたプレイから、多くのピンチを招いていた。

 そこで、たまりかねたビエルサは、第4節のニース戦から割り切って4-2-3-1を採用。すると、選手が慣れているディフェンス方法と、自らが望む前線からの激しいプレッシングをミックスできたことで、連動性という部分が大幅に改善された。しかも、ニース相手に4-0で完勝したことで、選手たちに自信が芽生えたことも大きかった。以降ビエルサは、このニース戦と続くエヴィアン戦の後半途中から3-3-3-1を試した以外、基本的に4-2-3-1をベースにチーム作りを進め、連勝街道を走り始めたのだった。

 そして、とてもワールドクラスとは呼べない選手たちで構成されているチームにもかかわらず、ビエルサによって各選手は確実に進化を遂げた。特に、次世代のフランス代表の中心を担うであろうMFフロリアン・トーヴァンは守備面で大きな改善を見せ、チャンスメイクと決定力でも昨シーズンとは比べものにならないほど成長した。また、好不調の波が大きかった天才肌のMFディミトリ・ペイェもトップ下で進化を遂げ、「もう終わった選手」と揶揄されたストライカーのアンドレ=ピエール・ジニャックも得点ランキングトップタイの10ゴールをマークして完全復活。ペイェとジニャックは、フランス代表にも復帰を果たしている。

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