これぞ最先端のサッカー。ペップ・バイエルンを見逃すな (2ページ目)

  • 木崎伸也●取材・文 text by Kizaki Shinya
  • photo by Getty Images

 この日、いかにバイエルンが"余裕"だったかは、試合中にシステム変更がなかったことからもわかる。

 今季、バイエルンは3バックに取り組んでいる。開幕前の準備期間、ペップは「今季は3バックで行く!」とミーティングで宣言し、新ステムへの挑戦を求めたのだ。その言葉どおりボルフスブルクとの開幕戦は3バックで臨んだ(3−4−2−1)。

 当初、選手は戸惑っていたが、シャビ・アロンソの加入でアンカーが定まったこともプラスになって形になり始める。3バックの主な組み合わせは、左からアラバ、ボアテング、ベナティア。全員がサイドバックとしてもプレーすることができ、実際、攻撃時になるとその役割を担う。そして守備では横にスライドして、相手にスペースを与えない。乱暴に言えば「4バックでやることを、3人だけでやってしまえ」という試みだ。予想もしなかった選手が攻撃に絡めるので、相手に捕まりづらいシステムだ。

 当然、相手がそれに備えた布陣を採用することもある。するとペップは、試合中でも迷わずシステムを変更する。目的に応じて、昨季に取り組んだ4−3−3や4−2−3−1にするのだ。たとえば11月1日のドルトムントとの大一番では、前半は3−5−2で臨み、香川真司が自由になっていると判断して後半は4−4−2バックに変更した。

「試合中のシステム変更」は、現代サッカーの新たなトレンドだ。ドイツの指導者向け雑誌『fussball training』は「ブラジルW杯における大きなトレンドはシステム変更だ」という企画を組んだ。

たとえばドイツ代表は4−3−3と4−2−3−1を大会中および試合中に使い分けた。オランダ代表はメキシコ戦で目まぐるしくシステムを変えた。ペップの試みもまさに同じ方向性にあり、「試合中のシステム変更」は今季のバイエルンの大きな武器になっている。

 だが、ローマ戦はシステム変更のカードを切るまでもなく、「オフザボールの連動」という武器だけで相手を崩し切った。

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