アシスト生んだ、内田篤人とシャルケとの美しい関係

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 さらに続けた。

「迷うこと? もちろんありました。移籍の話もまあ、なくはないから。でも、移籍するにしてもやっぱりお金(移籍金)は置いていきたいから。どっちにしろ契約更新はしてほしいとシャルケが言ってくれたから、しようとは思っていた。こんだけ良い経験させてもらって、タダで出るのはやっぱり違うなと思って。

 タダなら穫る選手と思われるなら、行く必要はないと思う、俺は。ちゃんとお金を出して穫るよ、という選手に成長していないってことだからね。そしたら行く必要ない」

 そんな気合いの表れか、このアウクスブルク戦のプレイは際立っていた。37分のアシストのシーン。自陣でボールを奪ってから相手ディフェンダーをかわし、ゴールライン際まで一気にドリブルで突き進んだ。約70メートルという距離を高速で駆け上がると、ゴール前を冷静に見据えてクロス。それもマイナスのクロスでは読まれると思い、GKとディフェンダーの間にきわどいクロスを送り込んだ。走り込んだFWフンテラールのことは見えなかったと言うが、タイミングはぴたりと合い、先制点に結びついた。

「あそこにいるのはさすが。あいつ、今日は点取るからって言ってたんだよね......」と、内田はフンテラールを称えた。だが、好アシストあっての得点だったことは言うまでもない。

 その後も内田は前でプレイするMFオバジをサポートしつつ、体を張ったプレイでスタジアムをわかせた。この日はピッチ状態が悪かったといい、「技術云々じゃなくて、戦う試合」になったと表現した。その一方で、「うちはもう少しつなげるはずなんだけど、どうもロングボールになるし、ミスも多い」と、試合内容には不満も漏らした。

 だが、そんな中でもしっかりと体を張り、的確な予測からのインターセプトでいくつものピンチを救った。力強いディフェンダーらしいプレイは、シャルケに来てから身につけたものだろう。"体を張って戦う"タイプの試合で、内田は予想以上の存在感を発揮した。

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