15季ぶり4連敗。ドルトムントと香川真司が勝てない理由

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 ただし、もともと複雑な決めごとがあり、スピード感が際立つドルトムントのサッカーに慣れるのには、かつての新加入選手も時間がかかっていたのは事実。レバンドフスキー(今季はバイエルンに移籍)も最初の年はバリオスの陰に隠れてゴールを外しまくったし、今季ここまで攻撃の中心になっているオーバメヤンもミキタリアンも、昨季はぱっとしなかった。加入して半年足らずで結果を出した香川真司はレアケースなのである。

 もうひとつ苦しんでいる要因があるとすれば、周囲から研究されてきたこともあげられる。対戦相手がドルトムントを「研究して、引いてやってくる」と、香川も実感している。結果、得意のショートカウンターがはまらないシーンがしばしば。ハノーファーの清武弘嗣は、ドルトムントとの一戦について、「前線の3人には綿密な指示があって、それどおりにやった」と明かしている。

 ただしこの試合、ハノーファーはさほど引いていたわけではない。シュート数はドルトムントの17に対してハノーファー7。ドルトムントには惜しいシュートもあり、勝つチャンスは十分にあったが、決め切れなかった。

 先週のチャンピオンズリーグ、ガラタサライ戦で足をつり交代した香川はベンチスタート。リードされた後半21分から途中出場した。その香川は復帰戦となったフライブルク戦以来、ゴールから見放されている。運動量や周囲とのコンビネーションなどはだいぶ戻って来た感はあるが、まだ香川らしいボールタッチは見られない。的確なファーストタッチで相手と接触せずに狭いエリアを抜け出す、あの感じがまだないのだ。

 また、この一戦に関しては、何より唯一のゴールとなった清武のフリーキックをほめなくてはならないだろう。決して自由に攻撃ができたわけではなく、ボールタッチも増えず消え始めていた時間帯の「あの1本にかけていた」というキックだった。ペナルティエリアの手前、壁の頭上を越えてすとんと落ちたボールはゴール左隅にキレイに決まった。同僚のFWホセルから「お前は今日、これで今季初得点を取る」と蹴る直前にささやかれたと言うゴールだった。「練習通り」と清武は控えめに語り、「2点目を流れの中で決めたかった」とつけ加えた。

 順位を落とし、まさかの15位に沈むドルトムント。3日後にはドイツ杯ザンクトパウリ(2部)戦、そして来週末にはバイエルン戦が待ち受ける。本来であれば首位決戦となるべきバイエルン戦。だが、今季はその構図が一変してしまっている。

 前半戦の正念場とも言える1週間になりそうだ。

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