ミランのベテラン番記者が本田圭佑を信じ続けた理由

  • クリスティアーノ・ルイウ●取材・文 text by Cristiano Ruiu 宮崎隆司●翻訳 translation by Miyazaki Takashi

■本田の好調を裏づける数値
 是々非々。この言葉の持つ意味を、一連の"本田報道"を見聞きしながら、当事者としてあらためて思う。今季開幕から7戦で6ゴールを記録したことでメディア全体が賞賛するのを"手のひら返し"と揶揄する向きもあるが、そうではないだろう。良ければ率直に評価し、悪ければ批判する。極めて当たり前の対応でしかない。

 むしろ、批判すべきを批判せず、単に「応援団」と化した類いのメディアが並べる「提灯記事」こそが、最も恥ずべき行為である。選手の活躍と成長を望むのであれば、前述の老人に倣い厳しい態度を示すべきだろう。対象となる選手が豊かな才能を備えているのであれば、見る目はさらに厳しくなって当たり前である。

 無論、ミランOB・コスタクルタの過去(昨季)の本田への批判的な見解()を引っ張り出してきて揶揄するなどもっての外だ。卑怯な後出しジャンケンでしかない。しかし、この恥ずべき行為を何人かのジャーナリストたちが行なっていると聞く。彼らに問いたいのだが、彼らは当時(今年3月)、コスタクルタの見解を公の場で批判していたのだろうか? 選手が劣悪なプレーに終始しても、選手の批判をしてはいけないのだろうか? だとすれば、メディアの存在意義はないということになる。

 かつてフランコ・バレージはこう言っていた。

「プレーの不甲斐なさは誰よりも選手本人がもっともよく知っている。当然、翌朝の新聞に厳しく書かれることも受け入れる用意がある。ところが、それがなければ一体なんなんだ......となる。つまり『俺は批判の対象にさえならないのか』『もう期待もされていないのか』となる」

 本題に戻ろう。

 本田は今季、誰もが知るとおり、開幕から6戦で昨季とはまるで違う動きを見せている。リーグ戦7試合6得点は申し分ない数字だ。選手のパフォーマンスの指標とされる「IVG値」(※)も、第6節終了時点でFW部門の7位タイにつけている。あますことなく、と言えないまでも、本来の実力を可能な限り発揮しているといえる。

※インターセプト、1対1の勝敗、ハイボール競り合いの勝敗、カバーリングと有効パス本数、ボール逸失、ファール数、攻撃エリアへの進入、アシスト本数、シュート数、ゴール本数などを相対的に評価し数値化したもの。全消化試合の50%以上に出場した選手が対象。
■トップ10は以下
1. テベス(ユベントス):24.8
2. ベラルディ(サッスオーロ):22.6
3. ザパタ(ナポリ):22.3
4. ガッビアディーニ(サンプドリア):22.2
5. メネス(ミラン):22.1
6. プッチャレッリ(エンポリ):22.0
7. 本田(ミラン):21.9
7. カッサーノ(パルマ):21.9
9. マッカローネ(エンポリ):21.7
10. ロドリゲス(チェゼーナ):21.6

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