2020年オリンピック開催地が東京に決まった理由 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 しかしブラジル大会終了直後の観客数の伸びは、そこまで大きくなかった。ワールドカップ直後の7~8月に行なわれた60試合の平均観客数は約1万7000人。昨シーズンの同時期は1万5893人だった。昨シーズンと比べると、ワールドカップ後の観客の伸びは約7%にとどまった。

 ワールドカップ後の国内リーグについてもうひとつ指摘しておきたいのは、新しいファンを多く集めているサンパウロFCでさえ、ワールドカップで使われたピカピカのスタジアムでプレイしているわけではないということだ。サンパウロの今シーズンの1試合当たり入場者数は約3万50人で、昨シーズンの2万3000人からかなり増えた、しかしこれは地元のヒーローであるカカがクラブに戻ってきたことと、一部のチケット価格を5レアル(約220円)に抑えているという要因がある。

 サンパウロFCは、同じ都市に本拠地を構え、ワールドカップのために建設された新スタジアムを使っているコリンチャンスより観客数を増やしている。コリンチャンスの今シーズンの平均入場者数は3万14人、昨シーズンは2万5168人だった(この増加率は、ワールドカップのスタジアムを本拠地にしているクラブのなかでは最も高い)。

 一部のクラブはワールドカップ後に観客が増えたことで、いくらかはリッチになっている。しかし国全体でみると、大きな経済効果がもたらされたわけではない。

 ブラジルのワールドカップはパーティーだったと考えるべきだろう。パーティーの主催者は、金持ちになりたくてパーティーを開くわけではない。楽しいから開くだけで、実際にブラジル人は(ドイツに1-7で負けても)大会を楽しんでいた。

 そうはいっても、多くの人々が食料や家や電気や医療に困っている国で贅沢なパーティーを開くのは道理にかなっていない面がある。フットボール選手から国会議員になったロマーリオは言った。「いい学校がない。いい病院もない。そんなところで、どうしてワールドカップをやれる?」

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