開幕直前、スキラッチが語るセリエAとカルチョの現状 (2ページ目)

  • 利根川晶子●構成 text by Tonegawa Akiko

 特にFWについては、波に乗っている選手というのは大事だ。かくいう私もW杯の前年にユベントスで活躍し、大会直前に代表デビュー。そのまま得点王となっている。今回のアッズーリには2013~14シーズンの得点王のインモービレ(トリノ、現ドルトムント)こそ代表入りはしたが、ランキング上位のデストロ(ローマ)も、ベラルディ(サッスオーロ)もジラルディーノ(ジェノア、現広州恒大)も入ってはいない。ペピート・ロッシ(フィオレンティーナ)もケガから復帰したばかりだが、メンバーに入っていれば何かをしてくれたかもしれない。

 今回のアッズーリの不調にロッカールームの不和を挙げる声もよく聞くが、本当のところ、どんな雰囲気だったかは私にはわからない。ただしチームが一つにまとまっていることが重要であることは確かだ。私がW杯をプレイした時のアッズーリは本当にいいチームだった。選手同士が皆仲よく、とても居心地が良かった。当時の代表は、ゼンガ、ジャンニーニ、ビアッリ、マンチーニなどほとんどがU-21の時からずっと一緒にプレイしてきた選手から成っていた。私はそこに一番最後に入った新参者だったが、そんなことを一度も感じることはなかった。だからこそイタリアは3位に入ることができ、私も得点王になれたのだろう。

 90年大会はイタリアでの自国のW杯だった。今回のブラジル同様、そのプレッシャーは並々ならないものがあった。しかし監督やスタッフたちは外界の喧騒から私たち選手をできるだけ切り離してくれた。おかげで宿泊していたホテルの中では私たちはのびのびと過ごすことができ、試合では自分のプレイに集中することができた。

 ブラジルW杯の後、プランデッリが監督を辞任し、コンテが後任に就くこととなった。彼はまだ監督としては若いが、すでにユベントスでスクデット3連覇を果たし、その手腕は確認済みだ。ただしクラブチームの監督と代表監督の仕事はまるで違う。クラブチームの監督は日々選手を育て、向上させていくのが仕事だが、代表監督は好調な選手を見抜くことが一番重要な仕事だ。

 私はコンテとユベントスでともにプレイしているのだが、まさか彼が代表監督になるとは夢にも思わなかった。選手時代のコンテはスタープレイヤーではなかったが、力の出し惜しみなどせずチームのためによく走り、また正確で誠実だった。今の鬼軍曹の面影はほとんどなかったが、監督になったら性格も変える必要があるのだろう。監督は誰の顔色もうかがってはいけない。責任も非難も一身に受ける。特に代表監督は全ての選択を自分でしなければいけない。大変な重圧だろう。とにかく心からエールを送る。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る