リーガ開幕直前。新監督の色が出始めたバルセロナ (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 新監督ルイス・エンリケの色が少し見えた試合ではあるが、バルセロナは今後、新たな進化を見せるかもしれない。地元紙は、ルイス・エンリケのチームはメッシを2トップ(ネイマールとルイス・スアレス)の下においた3-4-3を目指していると報道している。

 これは2つのシステムを相手に合わせて併用する可能性があるということであり、昨季までが"プランAの代わりはプランA"(バルセロナのサッカーはパスサッカーであり続けるという強い自負)でしかなかったことを考えれば、引き出しは増えることになる。

 だが期待と不安が入り混じる今季、バルセロナが成功を収めるかどうかの鍵を握るのは良い意味でも悪い意味でもメッシだろう。ガンペール杯の試合のように、しっかりとした運動量を背番号10番が見せれば、相手チームにとっては脅威となる。だが昨季のようなただのフィニッシャーになれば、チームに迫力あるプレイは生まれにくくなる。

 だからこそ、ルイス・エンリケがどのように選手たちの手綱を引き締めるかが注目される。

 黄金期には生え抜き選手重視をスローガンにしていたバルセロナだが、今シーズンは外様の選手たちを多く獲得した。生え抜きではないルイス・エンリケに監督が代わったことで方針が変わったわけではないと思うが、ペドロ、シャビ、セルジ・ロベルト、バルトラ、モントーヤといった生え抜き選手たちがベンチを温めることに不満を持つサポーターもいるはずだ。

 バルセロナはクラブの歴史的な背景からか、カタルーニャの選手であること、生え抜きであることに特別敏感なチームである。だからこそ、ルイス・エンリケがいかにバランスの取れた選手起用法をするかは、よけいな火種を生まないためにも重要なことなのだ。

 ともかく、ルイス・エンリケのチームはこれまでのバルセロナとは違う色を見せようとしている。チームが強いことは間違いない。そのチャレンジが成功するかどうかは、タイトルを争うライバルよりも、新監督がロッカールームをいかにコントロールできるかにかかっているだろう。

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