ドイツ1部参戦、ケルンのサッカーを変えた長澤和輝 (3ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by Getty Images

 ケルンを率いるシュテーガー監督はそんな長澤にベンチを温めさせていたが、その実力は評価していた。今季の1部での戦いも見据えて、ケルンのサッカーに変化を与えられる存在として獲得したものの、昇格へのプレッシャーがかかる試合が続く中でこの新人選手をどこまで使うべきなのか計りかねていた。

 ケルンは後半戦のスタートダッシュに失敗すると、前半戦から採用してきた4-4-2から4-2-3-1へとフォーメーションを変更する。数試合に渡って試行錯誤を繰り返していたところで、チャンスを得た長澤がついにポジションを奪取する。第26節アーレン戦(3月22日)で途中出場すると、次節で先発メンバー入り。結局、そのまま大幅にメンバーを入れ替えた最終戦を除いて先発の座を守ることになった。

 結局、長澤が先発に名を連ねてからのケルンは5連勝と、怒涛の勢いで1部昇格と2部優勝を決めた。

 長澤が加わったことでケルンのサッカーも変化した。これまでは前線の選手に簡単にボールを入れて、そこから個人技でゴールを狙うことが少なくなかったが、相手DFとMFの間でボールを受けられる長澤が加わったことで、攻撃開始の位置が相手ゴールに近くなり、そのパターンも多彩となった。大迫勇也との日本人対決となった1860ミュンヘン戦では直接ゴールには絡まなかったものの、攻撃のスイッチを入れる役割を担い、キッカー誌ではその週のベストイレブンに選出された。

 173cmの日本人が見せたのは技術の高さだけではない。第30節ウニオン・ベルリン戦(4月11日)では、試合途中まで走行距離、スプリント数、1対1勝利数においてチーム内最高の数値を記録した。球際の競り合いでも、屈強なドイツ人選手たちに臆することなく向かって行く姿勢を存分に示した。
 
 そんな長澤にとって、昨シーズンのハイライトは、2部優勝と1部昇格を同時に決めた第31節ボーフム戦(4月21日)だろう。デビュー戦と同じく1点を先制される展開だったが、ケルンが同じ轍を踏むことはなかった。この試合、ケルンは4-2-3-1のフォーメーションでスタートしたが、後半から4-1-4-1に変更。すると長澤がボールを触る回数がより増え、3点を奪って逆転勝利を収めた。

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