ドイツ1部参戦、ケルンのサッカーを変えた長澤和輝

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by Getty Images

 実力の片鱗は早くから見せていた。13年12月に入団した直後の練習では積極的にボールを呼び込んで攻撃のアクセントになるなど、ここでやっていけることを感じさせていた。今年1月、リーグ再開前に行なわれた練習試合では途中出場ながら全4試合で出場機会を与えられ、再開直前の試合では決勝ゴールをアシストしてみせた。

 そして、リーグ再開初戦では1点をリードされた状況で攻撃のアクセントになることを求められてピッチに投入される。その期待に応えるべく決定機を演出した長澤だったが、結局得点には繋がらず、チームは黒星を喫することになってしまった。

 するとそこから状況は一転する。その後5試合連続で出場機会を与えられなくなってしまったのだ。昨季のケルンは手堅いサッカーをするチームだった。34試合で20失点(これは1部を圧倒的な強さで制したバイエルンよりも3つ少ない)という強固な守備をベースに、前線のタレントを活かしたシンプルな攻撃で勝ち点を積み上げてきた。

 ケルンにとって1部復帰は絶対に逃すわけにはいかない目標。それを成し遂げるためには、能力があるとはいえタイプの異なる長澤を無理に起用するよりも、前半戦で築いてきたサッカーを継続していくのはもっともな判断だった。

 当然、この状況は長澤にとって非常に厳しいものだった。今まで試合に出られないという経験がほとんどない新人選手が、孤独な海外の地で初めてプロの厳しい競争に晒されたのだから。しかし、状況や環境が変わろうとも長澤のやることは変わらなかった。それは大学時代から続けてきた、自分で考えて練習に取り組むことだ。

「その時のモチベーションは練習でやれることを精一杯やって自分がレベルアップできるように頑張ることと、しっかりとアピールすること、あとは足りない部分を考えてやるというその3つだと思ったので、それを続けられたから試合に絡めるようになってきたのではないかな、と思います。出られてない時期が長かったですけど、その中でも(3つを)続けることができたので、そこは良かったな、と。途中で『いいや』とならないでやり切れたことは良かったなと思います」

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