とり・みきとヤマザキマリが体感した、W杯の実態

とり・みき ホテルにいても、ロシアのサポーターとアメリカのサポーターは、どこか似ているんですよ。服装に無頓着で、Tシャツ短パンビーサン姿だったり、水着でロビーを歩いていたりする。

ヤマザキ たとえば、観光でヨーロッパを訪れる彼らを見る現地の人々の目はかなりシビアです。服装でも食事なんかの態度でも、オーソドックスで保守的なものを意識している年配のヨーロッパ人がよく彼らを、「まったくデリカシーのない!」と批判したりしていますし、大学の関係者の会食に招かれて、その時にうっかりTシャツだったりすると「あら今日はアメリカ風?」と皮肉られたりすることもあります。まあ、教会にノースリーブに短パンとビーサンで入ってきてしまうノリだとそう思われてしまっても仕方ないですね。ロシアはまあ、アメリカほどラフな感じではないと思いますけど......。

とり・みき 応援も、ベルギーほど芸がないじゃないですか。大声は出るけれども。でも後半はその大声ロシアの応援のほうが圧倒していた。

ヤマザキ あの「ル・シ・ア」っていう発音が共鳴で「ブラジリア」って聞こえるときがあって、私の手前に居たブラジル人のおやじ達が「ブラ・ジリ・ア!」ってニヤニヤ笑いながら声を合わせていたのが楽しそうでした。何でも楽しい事に変換するんだなあって感心して見ていました。

とり・みき そういえばヤマザキさんの隣の席にいたメキシコ人は、ロシアを応援していましたよね。

ヤマザキ 滝のような汗をかきながら私の隣にやってきた、あの大きなソンブレロをかぶった、体格のよいお兄さん。湿ってジトジトになった折りたたんだ紙を持っていて、それを気弱そうにピッチに向けて広げているから、何だろうと思って見てみたらロシア語が書いてあるんですよ。で、後ろに座っているロシア人の女の子に「僕はこういう者ですよ」って説明するとそれが女の子達にうけて、嬉しそうにその紙とお兄さんの写真を撮っている。この人一体何だろうと思って、「あなたメキシコ人ですか?」って聞いたみたら、「はい」って。で、聞いてもいないのに「これはね」って、ジトジトの紙を示しながら「ロシアはメキシコと友達ですって書いてあるんです」って。

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