ブラジルに必要なのはヨーロッパの監督だ (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

7 あくまでナンバーワンをめざせ。ドイツやブラジルにとっては、世界一になることが唯一の目標だ。ユーロ2008で若いドイツ代表は決勝に進んだが、スペインのパスゲームに敗れた。ドイツ代表監督のヨアヒム・レーブは2位になったことを喜ばなかった。そのとき彼は「自分のチームをスペインのようにしたい」と考え、スペインのようにプレイするためのプロジェクトに着手した。

8 すぐにうまくなることは無理だとしても、プロらしくなるのに時間はかからない。ドイツは栄養学、統計学、コンディショニングなど多くの面で、世界のフットボール界をリードしている。ブラジルもそこをめざすべきだ。


 ブラジルがたどるべき改革の道は、ドイツが経験したものより厳しい。ドイツ・フットボール協会は685万人のメンバーを抱え、単一競技の団体としては世界最大だ。ブラジルにはこれに匹敵する強固な組織がなく、その点があらゆるレベルで革新を推し進めるうえで弱みになる。

 ブラジルでただひとりの天才ネイマールは、この国のフットボールが抱える病理を覆い隠す役割を果たしてしまうことがある(アルゼンチンではリオネル・メッシが、同じようなマイナスの効果を与えている)。地理的に考えても、ブラジルはフットボールの最先端を行く国々とは結びつきが弱い。

 いずれもブラジルが「学ぶ」ことを妨げる要素だ。しかしブラジルが4年後のワールドカップ・ロシア大会に臨むときに(それも予選を突破すればの話だが)、「ジョゴ・ボニート(美しいゲーム)」で世界を制した1970年大会を回顧しているようでは、もう言い訳のしようもない。

 そこにあるのはチームの死だ。
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